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killdiscoさん × Sanrio

「かく、おもう、めぐる」 イラストが紡ぐ、大切な人を想う時間。#02


嬉しいとき、楽しいとき、悲しいとき。

その想いを、ある人は言葉で書き、ある人は絵で描き、

またある人は音で画く。

大切な人、あるいは自分自身に宛てて「かく」時間には、

いくつもの物語があります。

2023年秋、イラストレーター3名とサンリオがコラボレーションし、新しいグリーティングカードを作るプロジェクトが始まりました。

本連載ではそのプロジェクトを通じて、さまざまな人の「かく」時間をめぐります。

killdiscoさん × サンリオ のコラボレーションカード3点 

第2回目は、思わず目がいく愛らしさと素朴さが共存するモチーフとグラフィカルなデザイン、解釈の余白を残す絵やかたちを「描く」イラストレーターのkilldisco(キルディスコ)さん。

コラボカードの制作背景や、カードや手紙そのものへの解釈、絵を描くことのその先に見つめていることについて、サンリオのカードプランナー(安友・立田・押川)と語らいました。

 

killdisco
デザイン会社勤務、アパレルブランドのインハウスデザイナーなどを経て現在は書籍の装画や挿絵、パッケージやリーフレットなどを中心にイラストレーター/グラフィックデザイナーとして活動中。
物の形にフォーカスした作品やそれぞれの境界を曖昧に混ぜ合わせるような作品を制作している。

オフィシャルサイト:https://killdisco.work

 

絵のその先を思い描き、そっと差し出すこと。

——グリーティングカードや手紙に関して、印象に残っていることはありますか?

killdisco:最近、個展の会場に置いている芳名帳のようなノートを、手紙を入れられる箱に変えたんです。

そうしたらとても距離の近いメッセージをもらえるようになり、一対一で向き合っている感覚になるので気に入っています。

 

また、10代の頃に流行っていた「文通」には、手紙を送り合うことへの原体験があるかもしれません。昔は雑誌や新聞の後ろのページに文通募集コーナーがあり、「バンドが好きな人、文通しましょう」などの募集文が住所とともに掲載されていたのです。

そこに手紙を送るとちゃんと返事がくるので、嬉しかった記憶があります。文通がきっかけで、ライブで待ち合わせをしたこともありますね。

 

カードや手紙は相手の元にいつ届くのかも曖昧で、隣の家に届いてしまったかもしれないし、封を開けずに引き出しにしまわれているかもしれない。メッセージアプリのように既読はつかないし、返事がくるかどうかもわからないわけです。

それでも手紙の行き交いには、いま考えたことに対する回答が時間を経て戻ってくる面白さと、人と繋がっていけることへの喜びがあるように思います。

 

立田:私も友人と文通をしています。中学時代の交換ノートを使い、年に2回ほど独り言のようなことを書いて送り合っているんです。
その緩やかな時間感覚が、気負いなく楽しめている理由の一つだと思います。

——初回の打ち合わせでは、制作の参考になればとサンリオのグリーティングカードをお持ち帰りいただきました。触れてみていかがでしたか?


killdisco:子どもが猫をとても好きなので、猫のカードを選びました。来月の誕生日に実際に使わせていただこうと思います。
たっぷり書けるスペースがあるのがいいですよね。両親でメッセージを書こうとすると、狭いスペースでは一言だけになってしまい味気ないので。

 

安友:どのくらいのスペースを書くエリアとするのか、そのバランスは吟味を重ねるポイントなので、そう言っていただけると試行錯誤した甲斐があります。

 

——コラボカードを作るにあたって、サンリオが準備した10枚のキーワードカードから、「とびら」と「予感」をテーマとして選んでいただきました。各カードの制作背景やストーリーを教えてください。


 killdisco:今回の制作では、いきなり絵を描き始めるのではなく、まず言葉で、カードや手紙とはなにか、そしてそれらを贈るとはどういうことかを考えていきました。

 カードや手紙は、人とコミュニケーションを取るために使うもの。相手のことを思い、考え、書くことがカードや手紙の役割だと考えました。

 

では、相手のことを思う、考えるとは、どういうことか。
評論家の小林秀雄が書籍『学生との対話』のなかで、興味深いことを記しています。

小林の研究対象である江戸時代の国学者・医師の本居宣長は「考える」つまり「かんがふ」とは「かむかふ」の音便だと考察しているそうです。
「かむかふ」の「か」には意味はなく、「むかふ」を分解すると「む」は身体の「み」のことで、「かふ」とは「交わる」。

要は、相手と向かい合い親密な距離でコミュニケーションすること、それこそが「考える」であり、遠い柱の陰から見てあーだこーだ言っているだけでは「考える」ではないと。

これは相手を思うことへの本質を捉えている気がして、制作の軸の一つにしました。



また、カードや手紙には「贈る」行為が伴いますよね。贈ることについて論じられているモースの『贈与論』のなかに好きな話があります。

 

人になにかをあげようとするとき、単に物が行き交うだけでなく「自分の分身」なるものも乗っていく。
その「分身」は元の持ち主のところに戻りたがるので、相手を思いやり、なにかをしてあげると、それはいつか自分自身に返ってくるというのです。
たとえば元気のない友人にコーヒー奢ってあげたり、話を聞いてあげたりすると、自分が困った時には誰かが助けてくれるかもしれない。

手紙を贈るとは、相手のことを考えながら、メッセージを書き「自分の分身」を文字に託します。
それに返事がくるかどうか、そもそも届いているかすらわかりませんが、それでも未来に起こるであろう相手とのコミュニケーションに期待をし、筆をとるわけですよね。

——それらがカード制作の軸に据えられているのですね。

killdisco:「とびら」のカードは、猫が「まあまあ中に入りなよ」と迎え入れてくれ、中面では「まあまあ座りなよ」と言っているかのように描きました。

これは「かむかふ」の「むかふ」、迎える・向かい合うから連想しています。






「予感」のカードには、手紙を入れたボトルを海に流している絵を描きました。いまの自分の気持ちを記すけれど、拾ってもらえるかどうかはわからない。
それでもきっと拾ってもらい、未来には新しい繋がりが起こるだろうという期待を込めている。

 
手紙を入れたボトルのインスピレーションは、SF作家であるシオドア・スタージョンの短編作品『孤独の円盤』から得ています。
それは、孤独のさみしさを綴った手紙をビンに入れて海に流した女性とその手紙を拾った人が繋がる物語です。

 
自分がふだん絵を描き、作品集を作り、展示をするときもその物語と近しいイメージで、ボトルに手紙を入れて流すから、拾った人は遊びにきてよという気持ち。

ボトルに入った手紙のモチーフは、ふだんから大事にしている絵のひとつです。





安友:こうして作家さんの考えや解釈を知ることができるのは、あまりないことなのでとても興味深いです!

 

立田:「予感」のカードは、流したボトルがどうなったのか、その先の未来を思わず想像してしまいます。
テーマを体感できるという意味で、インスタレーションのような面白さがありますね。

また、ラフ絵を受け取ったときに一番衝撃を受けたのは「とびら」のカードでした。私だったら「とびら」と聞くと、出発や門出など外に出ていく方の扉を連想すると思いますが、killdiscoさんの絵は、受け入れる側の扉になっている。
カード自体が帰ってくる場所、心のよりどころのような存在であってほしいなと、この絵を見て思いました。

 

押川:抽象的な言葉がどんな絵になるのかワクワクしていました! ラフ絵を初めてみた時、自分なりのストーリーを自然と想像して、サンリオ内でも言葉を交わす時間が生まれていましたね。

 

——文具女子博に合わせたテーマ「ティーパーティー」のカードについてはいかがですか?

killdisco:「ティーパーティー」のカードはストレートにお茶会にまつわるモチーフを書いています。

自分の目線で手前から絵を描いていますが、ティーパーティーなのでやっぱり向こう側に誰かがいてほしいなと思い、動物が座っています。

 

立田:カードを開いたときに、贈ってくれた相手が目の前に現れる感じがしました。2つ折りカードの形状を意識して描いてくださったのだなと。

 

killdisco:今回はどれもカードのかたちを活かして考えましたね。開いて閉じる一連の流れのなかで、3コマ漫画のようなストーリーになるように。
その一方で、1面だけでも楽しんでもらえるように。

また、今回のカードはどれもカスタマイズしてひと手間を加える楽しみを味わえるようにしました。
例えば「ティーパーティー」のカードには、ケーキを描いたり、好きな色を塗ったり、シールを貼ったりして遊べる余白があります。

 

——これらのカードはどのような場面や時間で使ってもらいたいですか?

 

立田:「とびら」のカードは、カード自体が家に見立てて作られていることもあり「家族」を思い浮かべました。
例えばプロポーズで使うなど新しく家族になる人への贈り物や、家族のような友人へのメッセージ、これまで一緒に暮らしてきた家族からの言葉をもらっても嬉しいですね。

 

安友:小2の娘たちには「ティーパーティー」を使い、自分たちの好きなようにカスタマイズして、贈ってほしいなと思います。自分が贈ってほしくなるカードですね。

 

押川:グループの友だち同士でそれぞれに合うものをカスタマイズして贈り合うのも楽しそうだなと思います!

 

killdisco:家族同士で贈り合うのもいいし、友人に贈るのもいい。相手を思い、じっくり手紙を書く機会はなかなかありませんが、少し手間をかけられるようにしてあるのでゆっくりと相手のことを想う時間も含めて使ってもらえたらと思います。

 



——絵を描くことの先になにを見据えているのでしょうか?

 

killdisco:自分が絵を描くときに大事にしているのは、その絵をきっかけに、本来交わるはずのない人たちが集う場を作ること。
つまり絵を描いて完結するのではなく、その先にある場や緩やかなつながりを作りたいと思っています。

 

たとえば描いた絵をギャラリーや書店などの場所に飾ることで、観にきてくれた方同士が仲良くなることがあるかもしれない。
「この絵って猫ですかね、犬ですかね」「猫じゃないですか」「かわいいですね」のように、絵という共通の話題がそのきっかけになったらと思っています。

「この絵を見てください、どうぞ!」と描いているわけではなく、その先にある場をみんなで一緒に共有したいなと。
そのための窓や入り口を作っているようなイメージです。

 

立田:カードも誰かが誰かのために選び、書き、贈ることで価値が生まれるものなので、作って終わりではないことにとても共感します。


——killdiscoさんにとって絵を描く時間とはどんな時間でしょうか。

 

killdisco:「誰かのためにお茶をいれている時間」という気がしますね。これから誰かが来るからお茶の準備しなきゃと。
コミュニケーションの種になるものを作っている。

ボトルに手紙を入れるような時間と近いのですが、その先に緩やかに繋がる人がいるイメージがありますね。

 

 

killdiscoさんと制作したこちらのコラボカードは、「文具女子博2023」にて先行販売いたします。

また、12月20日(水)10:00〜 サンリオグリーティングカードオンラインショップでも発売されます!

 

『always welcome』

 

『Message in a bottle』

『Tea party』
 

「文具女子博2023」イベント情報

開催日:2023年12月14日(木)〜2023年12月17日(日)

開催場所:パシフィコ横浜 展示ホールD
    (神奈川県横浜市西区みなとみらい 1-1-1)

※事前に入場チケットのご購入が必要です。
詳細は文具女子博公式サイトをご覧ください。

https://bungujoshi.com/event/bungujoshi2023/


Edit&Text:Yoko Masuda
Photo:Sonoko Senuma(amana)

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