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北澤平祐さん × Sanrio

「かく、おもう、めぐる」 イラストが紡ぐ、大切な人を想う時間。 #01


 嬉しいとき、楽しいとき、悲しいとき。

その想いを、ある人は言葉で書き、ある人は絵で描き、

またある人は音で画く。

大切な人、あるいは自分自身に宛てて「かく」時間には、

いくつもの物語があります。




2023年秋、イラストレーター3名とサンリオがコラボレーションし、新しいグリーティングカードを作るプロジェクトが始まりました。

本連載ではこのプロジェクトを通じて、さまざまな人の「かく」時間をめぐります。

 

北澤平祐さん × サンリオ のコラボレーションカード3点 

 

第1回目は、心にときめきを生む色彩とモチーフ、奥に潜む物語を想像させ、見る人を虜にする絵を「描く」イラストレーター北澤平祐さん。

カードの制作過程や、イラストに込められたストーリー、絵を描き、言葉を贈る時間について、サンリオのカードプランナー(安友・立田・押川)と語らいました。

 

<プロフィール>

北澤平祐
イラストレーター。魚座。アメリカに16年間在住後、帰国、イラストレーターとしての活動を開始。
多数の書籍装画やプロダクトなど 幅広い分野でイラストを提供。
近年は『ルッコラのちいさなさがしものやさん』(白泉社)、『ゆらゆら』(講談社)、『ぼくとねこのすれちがい日記』(集英社)などの絵本・書籍執筆も。
オフィシャルサイト:http://www.hypehopewonderland.com

 

書いて、贈ること。訪れるはずのなかった、もう一つの世界線をつくる

——北澤さんはふだんグリーティングカードを使いますか?

北澤:誕生日と結婚記念日には毎年カードを書いています。私は海外生活が長かったこともあり、グリーティングカードはとても身近な存在ですね。

 

——初回の打ち合わせでは、制作の参考としてサンリオのグリーティングカードをご覧いただきました。どのような印象を受けましたか?



北澤:デザインが豊富ですよね。どの年齢層の人に贈っても、笑顔になってもらえそうだなと。

他ではあまり見かけない形も多く、例えばこのお部屋のカードのレコード部分は触りたくなりますし、恐竜のカードはめくる仕掛けで遊べる。工夫されているなと思います。

 
サンリオさんのカード制作は、企画からイラストレーターとのやりとりまですべて1人で担当するんですか?

立田:そうですね。各企画を1人が担当しています!

担当した商品を見比べると、モチーフ選びや形態にそれぞれの「らしさ」がにじみ出ていて面白いですよ。

 

——今回制作した二つ折りカード3点(写真奥)のテーマは、サンリオが準備した10枚のキーワードカード(写真手前)を使って決めましたね。
すべて裏返し、北澤さんが2枚ずつ引いて組み合わせを作る、印象的な場面でした。

立田:こんなグリーティングカードがあったら、と思うキーワードを、制作のヒントになればと思いサンリオメンバーで集めました。神経衰弱のようなランダムな選び方は北澤さんの発案です!

 

北澤:カードを使ったランダムなテーマ決め、とても面白かったです。同じことをやり続けていると自分が飽きてしまうので、このカードが導いてくれた不思議な言葉の組み合わせのおかげで、ふだんとは異なる発想で絵が描けました。

 

押川:偶然生まれた「道+デコレーション」「とっておき+おまじない」。そして12月に出展予定の文具女子博に合わせたテーマ「ティーパーティ」には「!?」を組み合わせることになりました。

 

——各グリーティングカードの制作背景やストーリーを教えてください。

 

北澤:今回は、以前サンリオさんとコラボレーションして作った「ふたりぼんちゃん」カードの世界観を土台にしています。

 

安友:3年前に担当した「ふたりぼんちゃん」のカードは、私にとっても思い入れのある商品で、「続き」を作ることができて嬉しいです。

北澤:3つのうちまず、「とっておき+おまじない」では、「とっておき」の「おまじない」によってもたらされる変化をコンセプトにアイデアを練りました。

出来上がった絵の内容は、からっぽの鍋に向かっておまじないをしたら…色とりどりの飴が飛び出してきたというシンプルなものですが、

この「とっておき+おまじない」があれば一生食べるものには困らないかもしれません。

 

カードを贈ることによって、相手ともっと気持ちが通じ合えるなど、贈らなかった世界線とは異なる未来が生まれるかもしれない。

そう考えると、カードを贈ることは「おまじない」のようですよね。

  

安友:カードの役割をそのように捉えてくれて嬉しいです! 

北澤:「道+デコレーション」は、不思議な組み合わせのお題でした。たとえば武士道をテーマにデコった武士を描くなどひねり過ぎると伝わらないと思い、「道+デコレーション」をストレートに描くことに。

結果、「自分の道は自分でデコレーションして自分らしく進む」という、ある意味一番メッセージ性の高いものに仕上がったかもしれません。

 
立田:このカードを見たとき、中面の道に好きなシールを貼ってもらってもいいなと思いました! 自分の道を自分なりに飾って、人生の厚みが増していくような。

 

北澤:いいアイデアですね!



北澤:「ティーパーティー+!?」は、「!?」がついたことによって、ティーパーティーであり、ティーパーティーではないものはなにかと考えました。

結果、遊園地のコーヒーカップをヒントに、ティーカップに乗りこむふたりぼんちゃんを。

表紙ではミスリードとしてただのティーパーティにも見えるように、ふたりが遠くにいるようにも、カップに入れるサイズにも見えるようなパースで描きました。

 

立田:ラフ案が届いたとき、かわいい絵の奥に想いのこもったメッセージが詰まっていることに胸が打たれました! また、平面でも躍動感のあるデザインになっている点も魅力的です。

 

——このイラストはどのように制作したのでしょうか?

 

北澤:デジタルで組んだラフ絵をもとに、面相筆というとても細い筆と水彩カラーインクで線を描きました。今回はそれをスキャンし、Photoshop上で着彩しています。

 

——その画材はよく使うのですか?

 

北澤:面相筆とカラーインクの組み合わせは、最近よく使っていますね。筆なのでペンとは違い、意図しないような線の太さや揺らぎが出ます。コントロールが効かないところがアナログの面白み。

じゃじゃ馬のようなこの筆を使って描くことで想像とは違った絵ができあがる時がうれしいです

——どのような場面や時間にこのカードを使ってほしいですか?

 

安友:今回は特にメッセージ性を活かして使ってもらいたいですね。
例えば私は娘たちが人生の岐路に立ったときやここぞというときに「ふたりぼんちゃんのみちデコレーション」を使い、メッセージを贈りたいなと。

 

押川:用途が決められていないカードだからこそ、自分の気持ちを伝えたいとき、相手の近況を知りたいときなどに使ってもらえたら嬉しいですね。
カードを贈りたいと思う瞬間は、誕生日のような特別なときばかりではありません。ちょっとした気持ちを共有したいという些細な動機から書くこともあると思うんです。

 

立田:自分宛の手紙としてなりたい姿や想いを書き綴る時間を作るのもいいなと思います。
成人式の日に、タイムカプセルに入っていた自分宛の手紙を読み、中学時代の夢を思い出した経験があります。自分が確かに書いていた文字には他にはない説得力がありました。
自分の手で書くことは「おまじない」のような効果をもたらしてくれるのではと。

 

北澤:言霊ですね! タイムカプセルに入れるカードとしてこれを選んでもらえたら嬉しいです。

 

——北澤さんはふだんどのような心持ちで絵を描いていますか?

 

北澤:駆け出しの頃は、こういう絵を描きたい、この色を使いたい、自分が良いと思うものを描きたい!って自分のことしか考えていなかったのですが、とくに仕事絵に関して言えば、これで伝わるかなとか、こんな絵でも大丈夫かなとか、受け取り手を考えながら描くことが多くなったような気がします。

みなさん、色んな想いの先に私の絵を選んでくれているはずなので、絵の先にいるみなさんに少しでも喜んでもらえるものを作りたいと思うようになりました。もしかしたらちょっとだけ成長したのかもしれません。

イラストレーターの仕事って、誰かの(依頼者の)想いを絵に載せて代弁することなので、ある意味カードと役割が似ているかもしれませんね。

 

——北澤さんにとって絵を描く時間とは?
 

北澤:なんだかんだと今日までずっと描き続けているのは、結局描きたいものや伝えたいことがまだあるからだと思います。

描く時間とは、そんな自分の中に溜まっている何かをひたすら外に出すデトックス的作業なのかもしれません。

 

 


北澤平祐さんと制作したこちらのコラボカードは、「文具女子博2023」にて先行販売いたします。

また、12月20日(水)10:00〜 サンリオグリーティングカードオンラインショップでも発売されます!

 

『ふたりぼんちゃんのとっておきおまじない』

『ふたりぼんちゃんのみちデコレーション』

『ふたりぼんちゃんのティーパーティ!?』


「文具女子博2023」イベント情報

開催日:2023年12月14日(木)〜2023年12月17日(日)

開催場所:パシフィコ横浜 展示ホールD(神奈川県横浜市西区みなとみらい 1-1-1)

※事前に入場チケットのご購入が必要です。詳細は文具女子博公式サイトをご覧ください。

https://bungujoshi.com/event/bungujoshi2023/


Edit&Text:Yoko Masuda
Photo:Sonoko Senuma(amana)

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